趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】判決はCMのあとで(青柳碧人)

 現代版「十二人の怒れる男」なのか・・・?

 

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 今回取り上げるのは青柳碧人氏の小説『判決はCMのあとで』である。裁判がTVショーとなった世界というぶっ飛んだ設定ではあるのだが、そのわりにはしっかりとした法廷ミステリとなっているのが本作の魅力の一つである。

 

 物語としては裁判員制度によって裁判員に選ばれた主人公の生野悠太が他の裁判員と共に一つの殺人事件の裁判を担当するところから始まる。上に述べたように、この世界では裁判がTVショーとなっており、裁判員に選ばれるとそこから芸能界入りする人もいるという特異な世界である。裁判員出身のアイドル八人組からなるユニット、「CSB法廷8」はその中で絶対的な人気を誇るアイドルとなっており、裁判では格闘技のラウンドガールのような役割を果たしている。

 

 さて、そんな特異な世界観で繰り広げられる裁判であるが、裁判そのものは比較的真っ当な法廷ミステリとしてしっかりと読める。物語の流れとしては解説で東川篤哉氏が指摘しているが、どこか名作映画の「十二人の怒れる男」を意識しているような展開になっている。「十二人の怒れる男」が大好きな私も、この物語はわくわくしながら読むことができた。

 

 突飛な世界観と本格的な法廷ミステリが合わさった本作、「十二人の怒れる男」を知っていても知らなくてもぜひ読んでほしいと思う。