趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】巴里マカロンの謎(米澤穂信)

 この時をずっとずっと待ってた。

 

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 米澤穂信の「小市民」シリーズ、11年ぶりの最新刊が今作、『巴里マカロンの謎』である。これまでのシリーズの慣例からすると次に出るのは『冬期限定〇〇事件』のはずなのだが、今作はその慣例からも外れており、また、秋から冬にかけての物語が描かれているため、立ち位置的には番外編の短編集なのだろう。だが、それでも「小市民」シリーズの続きが読めるだけでも十分にうれしい。

 

 今作は小鳩常悟朗と小左内ゆきの似た境遇を持っている2人が「小市民」を目指すべく互恵関係を結び、平和な高校生活を送りながらも日常の謎に巻き込まれていくというミステリ作品である。

 

 今作は4話で構成される短編集であるが、個人的なお気に入りは3話目の「伯林あげぱんの謎」である。この「小市民」シリーズに限らず、米澤作品の青春ミステリの多くは生々しくダークな側面を孕んでいる。当然、そういう「ほろ苦さ」も好きではあるのだが、この「伯林あげぱんの謎」はそのような生々しさ、ダークな側面がほとんどなく、シンプルに日常の謎を楽しめる作品となっている。また、オチというか伏線回収も個人的好みであり、サクサク読めてしまう。単独作品としても十分に読みがいのある作品になっており、好きな作品である。

 

 全4話を通して読んでみても、やはり全体としての完成度は高く、そして何よりも「小市民シリーズが帰ってきた!」という感動が大きい。願わくは『冬期限定〇〇事件』をもって「小市民」シリーズを完結させてほしい。その一方で、まだまだ2人の「小市民」への道を追っていきたいという思いもある。新作が出たばかりで米澤氏には非常に申し訳ないのだが、「小市民」シリーズの新作が早く読みたいという思いでいっぱいである。