趣味のみぞ語るセカイ

趣味であるお酒や読書、アニメ等に関して思ったことを綴っていくブログです。

【レビュー】4ページミステリー 60の奇妙な事件(蒼井上鷹)

 長いミステリは覚えられない。

 

f:id:ChitaShindoh:20200117222903j:plain

 

 基本的にはミステリというものは、他ジャンルの小説に比べて文章量が多くなりがちである。当然だろう。事件や謎が生じてからそれを解決するのには探偵役の説明が必要となるため、どうしてもその説明に文字数を割いてしまうからである。

 ところが蒼井氏は、そのような傾向に反して「4ページで1話のミステリを書く」という離れ業をやってのけている。他にこのような短い文章でミステリを書き上げる作家は『2分間ミステリ』シリーズのドナルド・J・ソボルしか知らない(彼の場合は蒼井氏を上回る1話2ページでミステリを完成させているが)。

 

 話を『4ページミステリー』に戻そう。

 基本的には毎回登場人物や背景はまるで異なっており、1話完結型の体裁をとっている。今作には「探偵役」がほとんどの作品で登場せず、それが4ページでミステリを完結させる秘訣であるように思う。極力説明をせず、通常の文章の中に種明かしを仕込んでいるのである。それゆえ、一度読んだだけでは意味が理解できない作品も中にはあるのだが、それもまたミステリの醍醐味。読み直すのはたったの4ページでいいのだから骨は折れない。

 

 最近の私はどうも集中力がもたないのか、以前はよくやっていた「ミステリ作品を読み直して答え合わせ」ということがなかなかできない。それゆえ、このような短いミステリ作品に関しては個人的にかなり助かるのである。

 読書にそれほど慣れていない人も、これらの短い作品を通して読書力を徐々に身につけてみてはどうだろうか。