【レビュー】源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか(中川右介)
タイトルオチかと思いきや意外とちゃんと考察されている、「ドラえもんを通して社会学を学ぶことのできる本」。
タイトルに惹かれて本を購入してしまうことがまれにある。
大抵の本はタイトル詐欺で、大したことのない内容で落胆するのがある種のお約束なのだが、なかにはタイトルを上回ったしっかりとした中身のある作品に遭遇することもある。この作品は、まさにそれである。
この作品は『ドラえもん』を出発点としているが、中身はしっかりとした社会学の本である。しずかを通してフェニミズムを論じ、ジャイアンとスネ夫を引き合いに出して民主党政治を語る。のび太をスクールカーストの被害者だとして学校教育に一石を投ずれば、野比家にフォーカスをあてて家族論を説く。作品を読むと実に『ドラえもん』の世界は社会の縮図なのだなとつくづく感じる。
これを読むと、今一度『ドラえもん』を読み直してみたくなる。そして『ドラえもん』がいかに優れた作品であるかを再確認してみたくなる。社会学的観点以外から考えてみても、『ドラえもん』を読んでいると時々ハッと思うことがある。それは子どもの頃には笑いで見逃していたものであったが、大人になるといくつも引っかかりがあり、感心する。そういう観点で『ドラえもん』を見直してみるのも、きっと楽しいと思う。そんな「ちょっと見方を変えたドラえもんの世界」を楽しむための手助けとしてこの本を利用してみてはいかがだろうか。
リンク