趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】恋する伊勢物語(俵万智)

 私が古典を好きになったきっかけの本。

 

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 国語教員をしていたころ、生徒からよく尋ねられることがあった。

 

「先生は何で古典が好きなの?」

 

 残念ながら私は古典が好きだったわけではない。むしろ嫌いな部類であった。だが、そんな私が「古典を面白い」と感じるようになったのは、俵万智のエッセイを読んだことに他ならない。

 

 古典がなぜつまらなく感じるのか。それは、古典の授業が「現代語訳」することに重きが置かれており、それゆえ背景などよく考えもせず原文のまま読まされるからである。それはなかなかに退屈で面白いと感じるはずもない。ところがよく考えてみてほしい。俗に「古典文学」と呼ばれる作品は数百年、ものによっては千年以上も風化せずに伝え続けられてきたのだ。そんな作品が面白くないわけがないのである。

 

『恋する伊勢物語』は、平安時代初期に書かれた歌物語である『伊勢物語』から恋にまつわる物語をピックアップしてエッセイテイストで解説する作品である。やはり恋の話は面白く、私自身も好きだし、生徒ウケもよい。なかでも「筒井筒」や「芥川」の話は本当に面白いのだが、原文だとその面白さはなかなか伝わるものではないだろう。このエッセイは、原文だけでは伝わりづらい面白さを補完してくれる。この本を横に改めて伊勢物語を読んでみると、面白さは二倍にも三倍にもなる。この本をきっかけに、私は古典に触れるとき、まず時代背景や人物の背景を良く調べてから読むようになった。そうすると本当に古典は面白い。

 

 古典がつまらないと思う人はまずその背景をよく知ってから原文に触れると良い。そして伊勢物語に関しては、この本がその手助けをしてくれるに違いない。