【レビュー】猫語の教科書(ポール・ギャリコ)
これは小説ではない。教科書である。
私がポール・ギャリコを知ったのは多分に漏れず「スノーグース」である。なんて美しい作品を書く人だと思った。それは「雪のひとひら」でも同様でますますポール・ギャリコ作品に惹きこまれることとなる。そして私が三冊目に手を取ったのが『猫語の教科書』である。
こんなに設定にこだわった作品を私は他に知らない。あくまでもポール・ギャリコは「編集した」という体を貫き、この本を著したのは猫だとする。そのためにわざわざ暗号まで作る始末。
そして肝心の内容も、どのように猫が人間を躾けて快適な生活を確保するかということに関するいわば「猫の為のマニュアル」になっている。目次を見るだけでわくわくする本は久しぶりである。
そして何より、ポール・ギャリコはよく猫を愛し、観察していたのだと思う。『猫語の教科書』を読んでいると、ありとあらゆる猫の仕草に意図があるように思えてくる。今作を読んでから猫と触れ合ってほしい。きっと猫は今作に書いてあった挙動をとるだろう。そしてそれは人間を我が意に添わせるための行動に思えてきてならない。
猫好きはもちろん、猫が好きでなくてもひとつの読み物として十分に面白い『猫語の教科書』。ぜひ、一度手に取って猫の目論見を学んでほしい。
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