【レビュー】サクラクエスト(Alexandre S. D. Celibidache、古日向いろは)
町おこしに正面から向き合った良作。
P.A.WORKSお仕事シリーズ第3弾のコミカライズ。当然原作となるアニメも視聴済み&Blu-ray購入済み。アニメ放映中はそれほど評判が良くなかったけれども、私は大好きな作品である。
内容は主人公の小春由乃が勘違いから一年契約で間野山にあるミニ独立国、「チュパカブラ王国」の国王に就任するところから始まる。最初は由乃もやる気がなかったものの、間野山の人々に感化されて町おこしに真剣に向き合い、挑戦していくというものである。
この作品で特筆すべきは町おこしはもちろん、空き家問題や路線バス廃止問題など、限界集落や田舎町の現状がリアルに描き出されている点である。前半は町おこしなど、対外的な問題に注力し、後半はそこに住む住人などの対内的な問題にスポットを当てて問題改善に尽力する様が描かれる。そして、最も評価すべきポイントなのが、「何事も都合よくいかない」ことである。彼女らが作中で考える対策が妙にリアルで、またその落としどころが非常に現実的で「大成功」とも「大失敗」ともいえないところに収着するのだ。アニメだからといってスムーズに終始させない。アニメというとっかかり安い媒体で問題提起をしているからこそ、スムーズに終始させてはならない。これを通して、現実に起こっている問題に向き合わせようという意図を強く感じるのである。
そういう面では、アニメと同様とっかかり安い媒体である漫画でも原作に忠実にコミカライズしたという点で評価できる作品であると思う。全5巻であるため、非常にスムーズに読み進めることができ、そのうえでアニメと同じくらい問題に向き合いやすくなっている。
アニメでも漫画でも構わない。一度目を通して、田舎の現状に目を向けてみてはどうだろうか。