【レビュー】世界から猫が消えたなら(松岡圭祐)
果たして彼の前に本当に悪魔が現れていたのか。
今回取り上げるのは川村元気氏の小説『世界から猫が消えたなら』。佐藤健氏が主演で映画化もされた作品である。
文体が非常にライトであり、読みやすい作品である。また、心に響く言葉も多く、何度も読み返すほど味わいが深くなっていく作品であると思う。
この作品を読んで気になったのは、作中に出てくる「アロハ」というアロハシャツを着た悪魔が、果たして本当に存在したのかということである。それはすなわち、主人公が本当にあと一週間の命だったのかということの疑問へも直結していく。「アロハ」は作中で主人公とうり二つの姿で登場し、また、「あなたのああしたかった、こうしたかったという小さな後悔に対して逆に生きた姿」ということも主張している。そして、作中では主人公はまだ死んでおらず、長い間不仲であった父に会いに行くところで話が終わっている。
そこから考えられるのが、実は「アロハ」は主人公が作り出した空想の産物であり、この話は終末に向かう話ではなく、再生の話なのではないか、ということである。
まあ、御託をいくら並べても私の妄想に過ぎない。皆さんも本作を一読して見て思い思いのワールドに浸ってみては?
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