趣味のみぞ語るセカイ

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【企画】家にあるアニメ作品を全部見直してみる3 レビュー「この世界の片隅に」

  これまで見てきたアニメの中で、一番好きな作品。

 アニメ当たり年となった2016年の作品の中でも、興行収入断トツだった「君の名は。」よりも断然好きな作品。

 

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 「この世界の片隅に」。

 もともと原作のファンで、クラウドファンディングでアニメ映画化が企画されていた時から応援していた作品。その一方で、原作にあるあの世界観を壊さないような作品になるかという恐怖もあった。

 

 完成した作品を見て、鳥肌が立った。

 原作の雰囲気を一切壊すことなく、それどころか原作の良さを十二分に引き出してくれた映画だった。

 

 この作品はいわゆる「戦争映画」として見てほしくはない。戦時中が舞台なだけで、この映画は紛れもなく「日常映画」なのだ。戦争当時のさまざまな日常風景やあるあるが丁寧に描き出されている。平成に生まれた私だが、そのことを知らなくても劇場に見に来ていたお年寄りの反応から、映画の中の風景が当時の日常だったことがよく分かる。思い返してみれば、劇場であれだけのお年寄りがアニメ映画を見に来ていたのも初めての経験だった。こんな作品はこれ以降、出てこないだろう。

 

 そんなこのアニメの中で、今も私の中に深く残っているシーンがある。物語の終盤、戦争が終わっても日常は終わらず、生活を送るために配給を受けたり物々交換をしたりして一日一日を生きていく。その中で主人公のすずも戦争の中で自分のミスで亡くした晴美のことを思い返しながら「笑顔の入れ物」というように自分のことを表現した後、ご近所さんと声を合わせて口にする言葉。

 

「泣いてばかりじゃ勿体ない、塩分がね」

 

 これほど震える言葉を今まで聞いたことがない。

 いつまでも戦争に引きずられていても仕方がない。今を生きることを大事にしなければいけないということを最も端的に示した言葉だと思う。この言葉に、私は完全に心を持っていかれた。

 

 そんな「この世界の片隅に」が8月3日の土曜日、9時からNHKで放送されるらしい。この作品はぜひ、一人ではなく家族や、できれば戦争を経験したことのあるお年寄りと一緒に見てほしい。そしてこの作品を見たうえで出てきたいろいろな戦時中の話を、私にも分けてほしいものである。

 

 また、今年の12月に公開予定の「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」も、とても楽しみである。