【レビュー】万能鑑定士Qの事件簿0(松岡圭祐)
莉子がまだ「万能鑑定士」を名乗る前の話。
今回取り上げるのは『万能鑑定士Qの事件簿0』である。『万能鑑定士Qの最終巻』以来4年ぶりのQシリーズ最新刊であり、莉子がまだ自身を万能鑑定士Qと名乗ることを躊躇していた頃の話である。
時系列としては2009年、まだ力士シールが世に出始めた頃の話である。ここで莉子は帯にあるバンクシーの絵の鑑定と、グアムにて漢委奴国王の金印の鑑定を強いられることになる。
特筆すべきは今回のペアはこれまでの小笠原ではなく(小笠原とはまだ出会っていない)、松岡氏の別シリーズである『グアムの探偵』シリーズのレイであるところである。クロスオーバーは松岡氏の十八番であるが、それがここでもなされるのは非常に面白いものである(残念ながら、『グアムの探偵』シリーズを全く読んでいなかったため、読んでいる時は気づかなかったのだが)。
今作はQシリーズの10周年を記念して書かれた完全新作であり、「0」の刊行によって完結したと思われていた」Qシリーズの新たな物語が読めたのは非常に喜ばしい。そして松岡氏お得意のクロスオーバーによって、今後氏の他作品でも「凛田莉子」が活躍するところがきっと見られるだろう。松岡氏の作品からは今後も目が離せない。
リンク