趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】半分の月がのぼる空(橋本紡)

 これもまた、私のバイブル。

 

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 今回取り上げるのは橋本紡氏の『半分の月がのぼる空』である。

 当然ながら私が最初にこの作品を手に取ったのは「電撃文庫版」であり、全8巻をむさぼるように読んだ記憶がある。それから時が経ち、この作品が完全版としてリメイクされたのは知っていたが、なかなか読む機会に恵まれず、後回しになっていた。最近ふと次なに読むかと本棚を探っていたところ、この作品が目についたのでそれを機会に読み直すことにした。

 

 読み直し始めてからはあっという間である。すぐに半月の世界観に再び浸ることができた。やはり、半月は面白い。この作品を読むことがなければライトノベルというジャンルにハマることはなかったし、下手したらもう小説に手を出すことがなかったかもしれない。それくらい、半月は私を小説の世界にのめり込ませてくれた大切な作品なのである。

 

 内容は肝炎で入院している戎崎裕一が同じ病院に入院している秋庭里香と出会ってお互いに干渉され合うという物語である。

 この作品のポイントはというと、間違いなく読者を惹きこむことのできる言葉選びだろう。作品中の言葉でもいくつも印象に残っている言葉がある。「命をかけてきみのものになる」(これに関しては『チボー家の人々』からの引用だが)、「その手は、なにかを掴むためにある」など。ひとつひとつのセンテンスが短いからこそ印象に残り、すっと胸の奥に落ちていく。心地よいワード感である。

 

 完全版はもちろんのこと、完全版に収録されていない電撃文庫版の第二部、短編集も含めて半月ワールドに浸ってほしい。