【レビュー】押入れのちよ(荻原浩)
バラエティ豊かなホラーサスペンスを描いた傑作短編集。
何度も読み直したい名作というのは数が限られてくるが、この短編集は紛れもなく何度も読み直したくなる傑作である。
本作は9編からなる短編集であるが、実にバラエティ豊かなホラーサスペンスを描いている。その他にも、ホラーなのに切ない作品がいくつもあるのも本作の魅力である。
中でも私が何度も読み直してしまうのが「コール」である。
大学のサークルメイトであった三人の過去と現在を描いているのだが、内容を細かく言うことはできない。内容を細かく書いてしまうとこの話の面白さはないにも等しくなってしまう。そこが荻原氏の叙述のうまさなのである。そのうまさは「コール」に限らず、この短編集のほぼ全てに散りばめられている。それでも「コール」が一番好きなのは、やはり最後の一行であろう。これは、感涙ものである。
その他も表題作の「押入れのちよ」や「しんちゃんの自転車」などの切ない作品や、「殺意のレシピ」・「予期せぬ訪問者」などのサスペンスミステリな作品など、読んでいくうちに「やられた!」と思わされる作品ばかりである。
ぜひ、本作を読んで「やられた!」という気分を味わってほしい。
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