趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】雨の降る日は学校に行かない(相沢沙呼)

 表紙のイラストに騙されるな。

 

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 今回取り上げるのは相沢沙呼の『雨の降る日は学校に行かない』。

 作者の作品は『午前零時のサンドリヨン』や『小説の神様』などを読んでとてもきれいな文章を書く人だという印象があった。それで今回は魅力的なイラストと面白そうなタイトルに惹かれて作品を手に取った次第である。ただ、肝心の中身を読んで驚かされた。とてつもなく、ヘビーである。

 

 本作は学校を舞台にした連作短編である。ただ、登場人物は保健室登校をしていたり不登校だったり、他者には見せられないノートをつけていたりと、俗にいう「スクールカースト」の下位に属する人々である。そこで起こるのは、当然ながらあまり気持ちの良いものではない。ただ、これらの物語の救いとしてはそれぞれの主人公に希望が持てるようなエンディングが用意されていることである。

 

 それぞれのエンディングは別として、本作は女学生たちの生活をリアルに描いている。女生徒の多くがグループを作り、そのグループの中でもひょんなことからいじめが始まる。そしていじめの対象はひょんなことで切り替わり、それに耐えられないとグループから離脱し、孤独に耐えられず、不登校保健室登校になる。私が教員をしていた時にもこの傾向は多く見られた(さらには、最近は男子の「女子化」により、男子でも同様のことが起こり始めている)。その様子や各登場人物の心情を男性の筆者がリアルに描写できるというのは驚きの一言である。

 

 スクールカーストをはじめとして、いじめや不登校など、学校には様々な問題がある。それらの問題は大人の社会でも十分に生じうるものであるから、未熟な学生の社会で生じるのは当然だともいえるだろう。今その状況下にある人ほどこの作品を読んでほしい。それを読んで「こんな話あるはずないだろう」と考えるのか、「自分もこの人たちみたいに・・・」と考えるのか、できれば公社の気持ちを持ってほしい。

 加えて言うには、きつい時は必ず声をあげることである。我慢してどうにかなることは本当に少ない。いじめをしている方は必ず図に乗る。そして教員はその多くが生徒を先入観で見ているものであり、現状は見えていないことが多い(そもそも一人の人間が四十人近くを見ることに無理があるのである)。そのため、いじめ等の教室で起こっている問題にも気づかないことがほとんどである。

 誰でもいい。頼れる誰かに必ず伝えるべきである。自分で全て抱え込んで潰れてしまっては、たった一度の楽しい学校生活が台無しである。

 

 少し話は逸れてしまったが、とても完成度の高い作品なので、一回読んでみることをお勧めする。