趣味のみぞ語るセカイ

趣味であるお酒や読書、アニメ等に関して思ったことを綴っていくブログです。

【レビュー】百人一酒(俵万智)

 酒好きとエッセイ好きにはたまらない名作。

 

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 俵万智は私にとって「教科書の人」という印象である。

 

 世間一般では俵万智は『サラダ記念日』に始まる口語短歌のトップランナーというイメージなのだろうが、私にとっては彼女は短歌よりも教科書によく掲載されているエッセイの印象の方が強い。

 

 彼女は実に学生向けの文章を書くのに長けている。元々高校の国語教員だったことが強いのだろう。彼女の書くエッセイは主題が分かりやすく、簡潔で、そして詩的である。私が高校の教員だった頃、何度も彼女のエッセイを入試問題で使おうと画策したことがあった(残念ながら一度も実現しなかったが)。

 

 そんな「教科書の人」である俵万智がまるで教科書に適さない文章を書いていることを知っている人はそれほどいない。それが今回取り上げる『百人一酒』である。

 この作品はタイトルの通り「酒」がテーマのエッセイ集である。あとがきでも書いてあるが『百人一酒』に合わせて100篇を目標にしてそれを超える108+1篇を書き上げてしまったあたり、筆者の酒好きが知れる。

 

 彼女の酒には偏りがない。ありとあらゆる酒に精通し、それだけではなく居酒屋やバー、家飲みに至るまでありとあらゆる「酒」に関連したトピックを取り上げ、面白おかしく書き上げている。

 

 今作を読むたび、エッセイの内容に合わせた酒が飲みたくなる。そしてもっと早く彼女の存在を知っていれば、彼女がバイトしていた酒場に行けたのにと悔いることがある(と書いてみたけれど、当時に戻ったところで余裕で未成年であることに気付いた)。今はこのエッセイを肴にさまざまな酒を飲む日々である。