趣味のみぞ語るセカイ

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【レビュー】恋物語(西尾維新)

 私は貝木泥舟が嫌いであった。

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 〈物語〉シリーズは全てアニメのBlu-rayを所持しており、そして幸運なことに「物語フェス」に参加したくらいに追いかけている。アニメで全て内容を把握しているだけに(当然カットされた部分は原作を読まないと把握できないが)、積読本が大量にある現在、どうしても後回しになってしまい、今頃になってようやく『恋物語』を原作で読み終えた次第である。

 

 上述したように、私は貝木が好きではなかった。原因は『偽物語』であろう。暦目線から描かれている都合上、貝木は何よりも金を優先する詐欺師として描かれており、当然ながら好感が持てるはずがない。

 

 しかし、『恋物語』を読むことによって、貝木に対する印象というのは大きく変化する。貝木が語り手だというのもあるだろう。『偽物語』の時点で貝木に好感を持てないのは彼からおよそ感情というものが読み取れないからである。それが、『恋物語』で彼が語り手になることによって、彼の感情に加え、人間臭さを感じることができる。その途端に貝木がどこか憎めない存在となり、愛着さえ持てるようになる。

 

恋物語』は戦場ヶ原ひたぎ千石撫子の恋の結末を描く作品なのだが、もしかしたら貝木の人間臭さに恋する物語でもあるのかもしれない(残念ながら私は男なのだが)。